はじめに
2500万年前、私達の祖先はアスコルビン酸(ビタミンC)を合成する遺伝子を失いました。
理由は作る必要が無くなったからです。
自分で作らずに、他の生物が作ったものを奪えばいいからです!!
我々の祖先は、他の生物が作ったアスコルビン酸を奪うことで、アスコルビン酸を生成するのに必要なエネルギーを使わずにすみました。かわりに他の生化学的な反応に利用できるようになり、大きなメリットが得られたと考えられています。
つまり、アスコルビン酸生成の遺伝子を失ったことが進化上の利点となったのです。
しかし、一度失われたアスコルビン酸生成能を再び取り戻すことは出来ません。後に人間は軽度から重度までのアスコルビン酸欠乏に陥ることにもなり、その結果として病気や死という大きな代償を払うことになりました。
この欠乏でよく知られるのは壊血病です。
壊血病は、アスコルビン酸が欠乏することで、コラーゲンや歯の象牙質、骨や血管等への障害がみられるものです。
この病気の歴史は古く、明確に壊血病として記録が残るのは15世紀末の帆船時代が始まってからです。
新たな土地の開拓をする際に、長期間の保存可能な食材が求められますが、当時の保存食は乾物か塩漬けが定番であり、これらはビタミンを著しく欠いていました。それにより、長距離航海する船の乗員に壊血病が蔓延しました。アスコルビン酸は空気に触れさせたり、乾燥させたり、加熱調理で多量に失われます。この壊血病により、ビタミンが発見される20世紀までに多くの人が命を落としました。
そして現代人は、より安く、美味しく、保存が効くように高度に加工された、ビタミンやミネラルが欠乏している食品を食べているため、質的栄養失調に陥っています。
つまりアスコルビン酸も欠乏しているのです。
我々の最も初期の先祖はアスコルビン酸を豊富に含む食べ物を食べていました。果物や動物の臓器(筋肉を除く)にはビタミンCが豊富だからです。しかし現代はどうでしょう?皆さんはここ最近でモツを食べましたか?新鮮な果物を食べましたか?野菜を食べましたか?
あまり食べていない方が多いと思います。
自身を持ってYESといえなければ、質的栄養失調に陥っている可能性が極めて高いです。
ビタミンCの構造
アスコルビン酸(C6H8O6)はブドウ糖(C6H12O6)と非常に似た構造で、多くの哺乳動物ではブドウ糖からアスコルビン酸を合成しています。人間やモルモット等は生成能を失ったため、食に頼るしかありませんが、、、、
生体内では通常還元型のLーアスコルビン酸または酸化型のLーデヒドロアスコルビン酸の形で存在しています。
ビタミンCの基本的な役割
細かく書くと、沢山作用がありますが、以下の4つは抑えてください!!!
抗酸化作用
酸素は空気中に約20%ほど含まれており、生きていくために欠かせない存在です。
しかしこの酸素は、ある面から見ると生物にとっては毒になります。というのも、酸素は他の物質との反応性が非常に高いのです。例えば鉄は野ざらしにするとすぐに錆びますよね?そう、鉄が酸素と反応して酸化しているのです。
反応性が高いとどういう不都合が起きるかというと、自分と相手がくっついてお互いが変化してしままい、本来の機能を発揮できなくなります。
酸素は反応性が高いため、ありすぎると毒ですが、うまく使えばエネルギーを沢山生み出してくれます。しかし全てがコントロール出来るというわけではありません。
エネルギー源だけを酸化できれば良いのですが、、、、もちろん我々も一緒に酸化されています。生物は酸素を吸って、二酸化炭素を吐き出します。つまりCにO2をくっつけて吐き出しているわけです。このCは炭水化物や脂質、タンパク質などをエネルギーとして利用する段階で酸化され、二酸化炭素となります。この反応をさせているときに、自分も酸化されてしまうのです。
イメージとしては、焼き鳥を素手で焼いている様なもんでしょうか。自分も火傷しますよね。
ここで重要なのが抗酸化作用なのです。抗酸化作用というと何なのかというと、変わり身だと思ってください。
アスコルビン酸が身体が酸化される身代わりになってくれるのです。
焼き鳥でイメージすると火傷防止用グローブに当たりますね。
猛毒な酸素から自分を守りつつ、必要な箇所にだけ作用させるのにビタミンCは必要なのです。
コラーゲン合成
よく美容にアスコルビン酸が効果的だと聞くと思います。先程書いた抗酸化作用も重要なのですが、コラーゲンの重合にも必要不可欠な存在です。そもそもコラーゲンとは線維性のタンパク質で、わたしたちの皮膚や血管、骨に多く含まれています。そしてコラーゲンは細胞と細胞の間をつなぎ合わせる接着剤のような役割を果たし、皮膚や血管、骨に柔軟性を与え、丈夫にしてくれます。実に骨の20%はコラーゲンで出来ているのです。
アスコルビン酸はこのコラーゲンの重合(プロコラーゲンのプロリン、リシンを水酸化する)に関係しており、これがないとコラーゲン繊維の三重らせん構造ができなくなってしまいます。正常なコラーゲンがなければ、接着剤の役割を果たせなくなり、肌荒れや骨粗鬆症になってしまいます。
因みに最近では血中のビタミンCが濃度と、歯周病との関連性が数々の論文で指摘されてきています。
ビタミンCが欠乏しており、コラーゲンが作られず歯茎がボロボロになり、免疫も低下している状態だと歯周病になるのは当然のことですよね。
免疫向上、対ストレス
ビタミンCは体内に侵入したウイルスや最近と戦う白血球やリンパ球に多く含まれていることから、ビタミンCを接種することで免疫機能が強化され、病気への抵抗力が高まります。
ここで面白い研究を1つ紹介します。ある部屋に風邪ウイルスに感染させた人を8人、感染していない人を8人入れ、2週間一緒に生活させる研究です。
グループ①感染した8人+偽薬を飲まされた8人
なんと8人中7人が感染してしまいました。
グループ②感染した8人+ビタミンCを服用し続けた8人
コチラは8人中4人しか感染しませんでした。感染した4人も、グループ①の人たちと比べて風邪の症状が統計上有意に軽度だったのです。
つまりビタミンCは免疫向上に非常に重要な役割を果たしていると言えます。
次に対ストレスに関してです。
ストレスがかかると、副腎髄質ホルモン(アドレナリン、ノルアドレナリン)が分泌され、脈拍を早めたり、血圧や血糖値を上昇させてエネルギー供給体制を整えてストレスに対抗しますが、このホルモンの合成にもビタミンCは欠かせません。
また副腎は体重あたりでは他のどの生体組織より多くのアスコルビン酸を含みます。
そしてストレスを受けるなどしてアスコルビン酸不足に陥ると、副腎はこれらのホルモンを酸化から守ることができなくなり、ストレスに対する十分な反応ができなくなるのです。その結果副腎疲労が起こり、慢性疲労やうつの症状などが出現するのです。
他にも精神不安、下痢、アレルギー症状なども起こるとも言われています。
ストレスに曝されないようにすることも大切ですが、ストレスに対抗するのに必要な栄養素もしっかり摂らないといけないですね。
癌にも有効?
ビタミンCとブドウ糖の構造が似ていることががん治療に対して有効に働きます。がん細胞はブドウ糖を多く取り込みやすいという特徴がありますが、ビタミンCも構造が似ているため取り込まれやすいです。そして取り込まれたビタミンCはエネルギーとしては利用できません。つまりがん細胞は餓死してしまうということになるのです。また、高濃度のビタミンCがあると過酸化水素という物質ができ、がん細胞が死滅すると考えられています。
現在も研究中の段階ではありますが、高用量のビタミンC(一日50g以上)と抗がん剤を併用する事によって、治療成績が良くなるという話もあります。これからの研究が楽しみですね。
ビタミンCが有効だと考えられている疾患
ビタミンCは肺炎、関節炎、がん、白血病、動脈硬化症、高コレステロール、糖尿病、多発性硬化症、慢性疲労、アレルギーを含む主要な30以上の重大疾患に対して有効性が示されていいます。
効果がありすぎて、逆に詐欺を疑うレベルですよね。
しかし、ビタミンCは哺乳類にとって必要不可欠な栄養素なので、なんら不思議ではありません。
ビタミンCの合成能を破壊したマウスと、普通のマウスとの50%生存率を比較した研究がありますが、
普通のマウスが平均24ヶ月なのに対し、ビタミンCの合成能が無いマウスは6ヶ月ほどで半数が死にました。
摂取量が寿命に関わるほど、ビタミンCは重要な栄養素なのです。
もし興味があれば、以下のURLから読んでください。
https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/joho/1301_joho01.html
具体的な摂取量
ヒトはビタミンCを体内で作れないため、成人では1日の推奨量が100mg(2020年版食事摂取基準)と設定されています。また、通常の食事による過剰摂取の報告はないため、耐容上限量は定められていません。
私はどのくらい飲んでいるかというと、1日6g程度です。推奨量の約60倍に当たりますね。因みに風邪のひき始めには10グラム以上服用している事もあります。
藤川先生のATPセットでは一日3000〜9000mgとされています。がん治療で用いられる際には50g以上を使用している人もいます。
なぜそこまで高用量を服用するのでしょうか??理由としては2つあります。
①水溶性ビタミンは尿中に排出されるから、基本的には過剰症を気にする必要は無い
水溶性ビタミンは(BやC)は身体に蓄積せずに、短時間で尿中に排出されます。仮に摂取したとしても、過剰症は殆どありません。脂溶性ビタミン(ADEK)は身体からすぐに排出されずに蓄積するため、大量摂取すると過剰症が出る事もあり、摂取量には注意が必要です。
②質的栄養失調が慢性化すると、ビタミン依存状態になるから
これはビタミンの欠乏状態が続くと、身体に必要な回路が動きにくくなるため、動かすためには通常以上のビタミンが必要になるというものです。
例えるとすると、10年ぶりに外に放置していた自転車を漕ごうとしているようなイメージでしょうか。
チェーンとギアはサビており、潤滑油も無く、とても回せるものではありません。
これを回すためには通常以上の力が必要になるのです。
ですのでビタミンCに関しては、お腹がゆるくならない範囲で、沢山飲んでください。
摂取量
具体的にどのくらいの量が必要になるかは、個人差があります。
基本的にはビタミンCを1日3gから始めて、1週間ごとに1g増やしていき、お腹が少しでも緩くなったら、そこから1g引いた量を維持するのが良いと思います。最大量は9gまでです。
しかし風邪を引いたり、アレルギー症状が出ている場合などは大量にビタミンCが必要になるので、その限りではありません。
実際に自分で飲んでみて、体調を観察しながら適切な量を探ってみてください。
そして自分自身で理想的な食を作れるようになったら、減らしてみても良いです。
何を選べば良いのか
錠剤ではなくカプセルタイプ
持続放出型では無い通常のアスコルビン酸
天然由来か合成かはどちらでも良い
ビタミンCをグラム単位で服用するとなると、日本で売られているサプリメントは容量が少なすぎます。
ですので海外からの個人輸入がおすすめです。
おすすめのビタミンCは前回の記事を参考にしてください。
なにか気になることがあれば気軽にコメント下さいね。
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